ピンク色の羊たち
  「メー、メー」
  ある日、羊の鳴き声が聞こえた。
  美しいあの島から、優しさを背負って、やって来た。あの砂浜を歩き、伝馬船に揺られ、汽船に乗って、羊が三匹やって来た。
 ふわふわ、モコモコ。嬉しかった。
  「後ろに行くと危ないよ、気に入らないと後ろ足で蹴るからね」
 子羊はしばらくすると大きくなった。ゆったりとした身体に、ふさふさとした毛を巻き付けて、いかにも温かそうに歩きまわった。
  「そろそろ毛を刈る時期になったのね」
 羊を一頭連れてくるや、腰帯で後ろ足を瞬時に縛り上げ、数十キロもあろうかと見える羊を横倒し。男性に劣らぬ力。
 そして、直ちに、片方の前足を持って、バリカンで毛を刈りにかかった。羊は信頼に溢れた顔をして、おとなしくじっと身を委せていた。
  「羊が安心している間に、一挙にやらないと、手に負えなくなるのよ」
  「ふーん」
  見る見るうちに、羊は丸裸。帯を解かれたピンク裸の羊の傍らには大きな羊毛が残っていた。
 裸にされた三匹のピンク色の羊は、寒そうで、いかにもいたいけだが、明るい太陽の光に包まれて、楽しげに跳ねていた。

 人に与えられた知恵という賜物は、頭脳の明晰さに終りはしない。それを用いて、いかに生きるかにその価値はかかっている。