海の中の応援者
 汽船は、黄、白、赤茶のストラップ状の地層に飾られた島々の、幾つかの港に立ち寄った後、魚の背鰭のように尖った岩が沖へ向かって点々と並ぶのを左に見ながら、島々をはなれ、いよいよ灘に向かって進んだ。
  黒潮の帯は滔々とうねり、船の行く手を阻んでいた。灘の風は強く、絶対に寄せ付けはしないと意志していた。
  「ガガーッ、ガガーッ」
  「ガタガタ、ガタガタ」
  汽船は、身震いをして、黒潮の帯を切り裂きながら、沖へ沖へと前進した。
  一段と潮風は強くなった。快晴の光は海のおもてを輝かせた。その輝きは、いつしか空中に沸き立ち、ダイアモンドダストのように飛び回った。
  「バサッ、バサッ」
  数枚の氷の板が甲板に落ちてきた。
  「アッ、飛び魚だ」
  三十センチ程の透き通った氷の板をバタバタさせながら、口をバクバクさせて喘いでいた。
  汽船の周りはいつの間にか、さわやかな光の花飾りで彩られた。
  「ヒュ、ヒュー、ヒュ、ヒュー」
  音のする海面をみると、黒光りのする隆起物が黒潮の帯を押し上げていた。
  「イルカだ、汽船に伴走して泳いでいる」
  数頭のイルカの声援に、喘ぎ喘ぎ、灘の黒潮を裁ち切って全力で進む汽船は勇気を得、有らん限りの力で灘を越えていった。
  もう、遥か彼方には内地の島影が見えていた。岬から少し離れた小さな島の間を潜れば、憧れの内地がある。汽船は、大きな期待を載せて、希望の地へと航路を進めた。